お客様事例

業界の発展のために、企業を集約化したい。
働く人を想うM&Aで新たな道を拓く。

株式会社エムクライム 
代表取締役 森本 光則 様

譲渡企業概要

会社名
株式会社エムクライム
売上規模
54億円(グループ合算)
資本金
1,000万円
本社所在地
兵庫県三木市
従業員数
約50名
事業内容
新車・中古車販売、修理、カスタム
M&A実施前の課題
業界の発展

譲受企業

会社名
株式会社ジーライオン

兵庫県三木市で自動車の販売やカスタムを行っている株式会社エムクライム。業績は順調に推移しており、オーナーも働き盛りの年齢でしたが、業界の持続的発展を願いM&Aを決断しました。この決断に込めた想いについて、代表取締役社長の森本光則さんにお話しいただきました。

気軽な気持ちで始めた中古車販売事業

エムクライムは3社のグループ会社と、5つの店舗、3つの工場、そして海外拠点を持つ企業です。創業からどのような経緯でここまで成長したのでしょうか。

創業は2001年、私が25歳のときでした。私は17歳から建設業に従事しており、19歳から自分で建設業を営んでいました。しかしあるとき、中古車販売は参入障壁が低いということを聞きかじり、経営をしてみたくなったのです。特に自動車が好きだったわけではなく、知識もほとんどありませんでした。勢いで事業を始めたとしかいいようがありません。しかし実際のところ、中古車販売は古物商の許可さえあれば誰でも始められる商売でした。

若さゆえに勢いがあったのですね。

そうですね。ビジネスの経験も常識もなかったため、開業資金は消費者金融で借りるという有り様でした。今にして思えば本当に恥ずかしくおかしい話なのですが、それぐらいの知識量でも開業はできてしまいました。
大変だったのは店を持ってからです。計画性が不十分であったため仕入れ資金の確保にも苦労しました。しかし事業を回しながら少しずつ経験を積んでいき、7年も経つと会社らしい組織になっていきました。

「高くても価値のあるものを提供する」戦略で成長

どのようにして売上や利益を拡大していったのでしょうか。

当初は「安くて良いものを提供すればお客様に喜んでもらえる」と考えていました。しかし事業を営むうちに、それを実現することは非常に困難であると理解します。例えば「1000万円を渡すから格安のスマートフォンを作れ」と言っても中小企業にはほとんど不可能でしょう。安さと品質を両立させるのは大企業だからこそ可能な戦略なのです。中小企業は別の戦略を描かなくてはならないと気が付きました。

そこで「高くても価値のあるものを提供する」ことに舵を切り、正規ディーラーが扱わないようなカスタマイズ仕様の自動車を販売することにしました。1万人のうちたった1人でも喜んでくれる方がいれば、小さな企業は十分な売上を確保できます。インターネットを活用すれば全国が商圏となるため、商売は成立すると考えました。

社員のために企業規模を拡大

その戦略が当たり、エムクライムは順調に企業規模を拡大させていきました。

店舗を増やしたのは売上拡大のためではなく、社員の成長の舞台を用意するためでした。店舗が1つしかなければ、店長になれるのは1人しかいません。有能な社員を役職に就かせるためには、ポジションを増やす必要がありました。店舗を増やすことでより多くの人材を役職に就かせることができれば、給与を上げる仕組みを整えられます。社員が結婚し子どもを育てられるようにするためにも、成長の舞台を提供する必要があると考えました。

事業が順調に推移する過程で、エムクライムはM&Aによる譲受を3度行っています。

人口動態の急速な変化に対応するためにはM&Aが有用です。私たちの世代は同い年の人間が約200万人いますが、2025年現在に生まれる子どもの数は年間70万人を割っています。およそ20年後には、働いて自動車を買える年齢層の人が1/3になるということです。これまで100台の自動車が売れていたエリアでも33台しか売れなくなるでしょう。市場自体が縮小していくなかでは、M&Aによる事業者の協業が欠かせないと思いました。

人口が減少しているのに、会社の数が多すぎる

人口減少社会に対応するためには、どのような協業が必要なのでしょうか。

端的にいえば、企業の数を減らすことです。未来の市場に対して企業と社長の数が多すぎるのです。自動車のリテール企業はバブル期に増えた後、企業数が大きく減らないまま高齢化が進みました。過去の売り方を変えられないまま存続している企業も少なくありません。現行のディーラー、サブディーラー制度は昭和の需要が増大したときに設計された仕組みで、需要が減少している局面には合っていません。
すでに業界内には需要と供給の不均衡による歪みが生じており、国家資格保持者である自動車整備士の給与が低く抑えられているということが起きています。このような問題を解決し、自動車リテール業界が持続的に発展していくためには、会社を再編し数を減らしていく必要があるでしょう。

自動車リテール業界は変わらなければならない

リテール企業を集約すると、どのように業界を変えることができるのですか?

市場が縮小していくなかでは、薄利多売の商売ではなく、1台あたりの利益を最適化し、顧客と良好な関係を保持する仕組みが必要です。
現在多くのリテール企業は、インセンティブ制度を導入しています。販売実績に応じて、社員に報酬が支払われる仕組みです。しかしインセンティブ偏重の運営は顧客体験を豊かなものにしていません。現に、顧客が自動車購入の手続きをしていても、担当者が不在の日に訪れると満足な接客がなされないという事態が発生しています。これからの自動車リテール企業は、販売数を競うのではなく、顧客一人ひとりの満足度を高めていかなくてはならないでしょうM&Aによってこの運営の思想を業界全体に広げていきたいと考えています。

M&Aの他にも業界を守るためにされたことはありますか?

ディーラーを集約することを自動車メーカーに提案したことがあります。金融機関や不動産会社とも連動し、適正な引き際を制度化することを訴えました。しかしながらオーナーが70代や80代に達していた場合、撤退の判断をすることは難しく、結局は救済できないことが少なくありませんでした。あと5年働きかけが早ければ救えたかもしれません。適切な時期にオーナーが会社を手放せる制度が再編の鍵だ思います。

自分が経営する会社も再編の対象外ではない

譲受によって企業の集約化を進めてきたエムクライムが、譲渡に踏み切った背景には何があるのでしょうか。

M&Aを進めてきた目的は、自社の拡大ではなく業界の持続的発展のためです。ですから当然、エムクライムが大きな企業の傘下に入ることも検討していました。適切な時期に適切なマッチングができれば譲渡をしたいと考えていたのです。

譲渡はどのような経緯で進められたのですか?

ハレバレさんから届いたメールに何気なく目を通したときに、なぜだかピンと来ました。同時期に5社のM&A仲介会社からアプローチを受けていたのですが、直感的にハレバレさんに連絡をしてみたいと感じたのです。
電話をかけてみると、とても誠実で頼りがいのありそうな方が対応をしてくれました。それが代表の松本さんです。それから、M&Aのことを色々と相談する中で、「この人になら任せられそうだ」と感じ、仲介を依頼しました。
実際、話を進めていくとマッチングや譲渡へ至るプロセスのサポートだけではなく、M&Aの後の会社のあり方についても踏み込んだ提案をしてくれ、とても頼りになりました。

譲渡の条件は企業や社員が成長できること

譲渡にあたっては、どのような条件を設定していたのでしょうか?

業界がより良くなることを願ってのM&Aであったため、金額よりも相手企業の成長性などを重視していました。またエムクライムの社員がさらに成長できるかどうかも重要でした。具体的には、雇用や給与の維持、多事業への異動や登用を含む挑戦の機会の有無、役員や社長登用の道があるかどうかです。

それらを検討された結果、大手自動車関連会社ジーライオンへの譲渡を決断されます。

ジーライオンは自動車関連会社を中心に約150社を擁するグループ会社です。中小企業の集合体らしい機動力があり、傘下企業同士の連携も図れていることから、定めていた条件を満たせると感じました。このグループに入れば、より一層、企業も社員も成長ができると考えたのです。またジーライオンがエムクライムと同じ兵庫発の企業であることも、地域単位の集約を現実的に進める上では合理的だと感じました。

明晰な判断をし続けるために、M&Aは必要

事業譲渡に対する社員の皆様の反応はいかがでしたか?

M&Aの直後は大企業の傘下に入ったことに安心感を覚えた社員がおよそ半数でしたが、「エムクライムは独立を保つことができたのに」と考える社員も半数ほどいました。かつてエムクライムはジーライオンを追い抜くことを目標としていたため、反発の気持ちは湧きやすかったのかもしれません。しかしM&Aの目的と意義を丁寧に説明したところ、多くの社員が納得してくれました。M&Aに際しての大量離職などは発生していません。ジーライオン側の対応が誠実だったことや、私がエムクライムの代表取締役をしばらく続投することも心理的安全性に寄与したのではないでしょうか。

森本さんご自身は、オーナーでなくなることに対して寂しさを覚えることはありませんでしたか?

私は50歳になるころにはオーナーを辞めることを決めていました。経営者には旬があり、30代が最盛期、40代は黄色信号だと考えています。最適な判断をし続けるためには50歳ぐらいで一度トップの座は交代した方が良いでしょう。
この点においてもジーライオンの経営層とは考え方がよく似ていると感じています。ジーライオンの子会社の経営層の多くは40代です。ジーライオンが明晰な経営判断ができる理由の一つかもしれません。

オーナーは社員や顧客の未来を見据えた決断を

エムクライムのように業界の発展性のためにM&Aという選択肢をとる企業は多くはありません。

オーナーによる会社の私物化は会社の発展を妨げることがあります。とくに創業社長の場合は、創設した企業に並々ならぬ思い入れがあり、手放すことは辛いでしょうが、社員や地域の顧客にはまだ築くべきキャリアや養わなくてはならない家族がいます。ステークホルダーにとってより良い選択肢を残していく視点が重要なのではないでしょうか。
少子高齢化により消費が減少する社会において会社を存続させ、顧客に価値を提供し続けるためには、M&Aという手段は有効です。とくにシナジーを発揮できる企業との提携は、会社をより発展させてくれるでしょう。

M&Aを検討している中小企業のオーナーにアドバイスをするとしたら何を伝えたいですか?

今後は一層、日本国内だけではなく、海外へも目を向けていかなくてはなりません。中小企業であっても国内の「1億2000万人」の市場にとどまらず、世界の「80億人」の市場で考えるべきです。M&Aによってチャネルやプロセスが広がれば、アプローチを広げることは可能でしょう。企業の持続的発展のためには、適切なタイミングでのM&Aを検討するべきです。
ありがとうございました。

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