後継者不在リスクを会社譲渡で解決する方法

経営者の高齢化がもたらす突然の事業停止

経営者が高齢になると、突然の病気や事故によって経営の継続が困難になるリスクが高まります。後継者への引き継ぎと育成が不十分な状態で経営者が倒れた場合、会社の意思決定が停滞し、取引先と従業員に大きな混乱を招く可能性があります。実際に、事業承継の準備が整わないまま経営者が急逝し、やむなく廃業に追い込まれる企業も少なくありません。

従業員と取引先への影響

後継者不在で廃業を選択した場合、最も大きな影響を受けるのが従業員です。長年働いてきた従業員は職を失い、新たな就職先を探さなければなりません。また、取引先との関係も途絶え、地域経済全体に悪影響が及ぶこともあります。中小企業庁の試算では、後継者問題が解決されない場合、2025年までに約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があるとしています。

M&Aで実現できること

M&Aによる事業承継では、会社または事業を売却することで、買い手企業が新たな経営者となって事業が引き継がれます。従来は大企業が行うイメージが強かったM&Aですが、現在では中小企業においても一般的な事業承継の方法として認知されています。国と自治体も積極的に支援しており、税制優遇や補助金制度が整備されています。

主な手法と特徴

株式譲渡による承継

中小企業のM&Aで最も多く選択されるのが株式譲渡です。オーナーが保有する株式を譲渡することで経営権を移転する方法で、会社の法人格はそのまま残ります。社名、従業員との雇用契約、取引先との契約を変更する必要がないため、シンプルで円滑な承継が可能です。

事業譲渡による承継

会社の法人格は残したまま、特定の事業または資産のみを売却する方法です。複数の事業を展開している場合や、一部の事業だけを譲渡したい場合に適しています。

自社の強みを明確にする

技術力とノウハウ

長年培ってきた独自の技術、製造ノウハウ、サービス提供の方法論は、買い手企業にとって大きな価値となります。特許または知的財産があれば、それらも欠かせないアピールポイントです。競合他社と比較して優位性のある技術については、定量的なデータで証明できるよう準備しておくと良いでしょう。

顧客基盤と取引関係

安定した顧客基盤、長期的な取引関係は、事業の持続性を示す大切な要素です。リピート率、取引年数、主要顧客との関係性などを整理しておくことで、買い手企業に安心感を与えられます。

地域でのブランド力

地域に根差した事業を展開している場合、その地域における信用度とブランド力は大きな魅力となります。地域の顧客から信頼され、金融機関からも高い評価を得ている企業は、その地域への進出を検討している企業にとって魅力的な買収候補となります。

財務状況の整理と改善

決算書や財務諸表を整備し、経営状況を透明化することも必要です。可能であれば、業績を改善させてから譲渡のタイミングを検討することで、より有利な条件での交渉が期待できます。